新しい移動手段として注目されている電動キックボード、日本では数年前から電動キックボードの普及に取り組み、実証実験や道路交通法改正を行い令和5年4月に最終的な道路交通法改正案が可決され、同年7月から実施されることになりました。
適応した道路整備や新しい交通ルールの認知度が低い中で実施させる電動キックボードなどを対象にした新しい道路交通法。
この記事では新しい交通ルールでの電動キックボードの危険性や安全性、現状の事故状況などについて解説したいと思います。
電動キックボードは危ない?
ここでは電動キックボードの危険性について、考えて行きたいと思います。
今回注目する点は、法改正後の危険性についてです。
令和5年7月より実施される法改正に「特定小型原付自転車」という新しい区分が設けられます。
一定条件を満たした電動キックボードなどの軽車両が対象になり主な改正ルールでは、
・16歳以上は免許不要
・ヘルメット着用は努力義務
・最高速度20km/h
・通行区分の変更
などがあります。
今回は、この4つについて考えて行きたいと思います。
まず、「16歳以上は免許不要」についてですが、このルールは特定小型原付が最高速度20km以下で自転車と同じ扱いとすることが前提になっていると思います。
自転車を運転する際はもちろん運転免許はいりませんので、現行交通違反をしても悪質でない限り警告や注意で取り締まっていますが、特定小型原付で交通違反をした場合は原付バイク同様に罰則されます。
そもそも免許を持っていないということは、道路交通法を知らない、道路標識の意味も理解していないということになります。
たとえば下記のような標識、免許を持っていない人が理解できるのでしょうか?
この他にも免許保持者でも「確かこうだった」と思うような、交通ルールもあると思います。
交通ルールも理解していない中、「ルールを守って」と言われても困りますよね。
免許不要としても、最低限の講習を受け交通ルールを理解することは必要ではないでしょうか。
次にヘルメット着用の努力義務
努力義務とは出来るだけ着用してくださいという解釈ですが、2019年ロサンゼルスの電動キックボードによる負傷者の研究では、電動キックボードの運転手側の事故では、衝突事故が2割と転倒事故が8割で、一般的な外傷では頭部外傷が最も多いという結果が出ています。
ヘルメット着用は電動キックボードの普及の妨げになるという点からだと思いますが、構造上バランスが取りずらい電動キックボードは転倒リスクが高いのに本当に努力義務で良いのでしょうか。
最高速度20kmは一般的な自転車ママチャリより速い速度、タイヤが小さくバランスを崩しやすい電動キックボード、実際に運転してみると道路には以外と凹凸が多くタイヤが小さい分ハンドルが取られやすく、ちょっとした段差も気を付けていないと衝撃がかなりきます。
また、歩道を走行する際に歩行者優先で時速6km/hというルールが本当に守れるのかも疑問が残ります、自動車社会でもスピード違反をする車は、日常茶飯事と言っていいほど自動車を運転していると見かけます。
また、自転車は一般的に制限速度なく歩道を走行できます、その中で電動キックボードが時速6km/hを守れるのでしょうか。
最後に通行区分の変更ですが、そもそも免許がない人が車道や路側帯、自転車レーンや歩道などの解釈が正しく理解できるのか?
自転車レーンや歩道は走行しても良い?どこでも走れると錯覚してしまわないのかなどが懸念されます。
今回取り上げた4つの点だけでも「電動キックボードは危ない?」と考えた時、事故が起きる危険性は十分にあり、適応した道路整備や新たな法改正が必要と言えるのではないでしょうか。
安全性は?
現在、電動キックボードのシェアサービスを展開するLuupさんがホームページで、こんな表現をしています。
安全・安心で、かつ利便性の高いユニバーサルなモビリティが開発され、それらが若者から高齢者まで幅広い人々に受け入れられたときには、自転車やキックボードからは撤退しても構わないとすら考えています。
引用:Luup
これは電動キックボードの普及に力を入れる一方、最終的により安全な乗り物が普及すれば撤退しても構わない、電動キックボードは不安定な乗り物でありバランスを取り乗りこなすのは難しいと認めていることになり、専門家から見ても「安全な乗り物ではない」ということになります。
保安基準や車体の安全性について
電動キックボードは平な道を走るには快適だが、白線の上をフラフラせずに走行することやポールを置いてスラローム走行するとなると慣れている人でも難しい乗り物だということが実際に乗ってみると分かります。
一番の原因はタイヤの大きさとソリットタイヤ(エアーが入っていない、チューブレスタイヤ)。
路上を実際に走行してみると、路面には以外に凹凸や段差が多くタイヤが大きい自転車では難なく走行できるが、タイヤが小さいくソリットタイヤの電動キックボードはハンドルを取られやすく路上の状態に注意して走行することが必要です。また、グレーチングや白線などの部分も注意して走行していないと滑りやすいです。
現在販売されている電動キックボードの走行姿勢については、前後に足を乗せる姿勢ではなく、前を向いて左右に足を乗せる姿勢がとられています。
前を向いて乗る自転車やバイクはシートに乗ることで、バランスを取る部分が一点になり重心が取りやすいが、電動キックボードの場合は立って走行するのでバランスをとるのが左右の足になり、しかもバランスコントロールをする足の膝が伸びている状態、これでは上手くバランスを取ることが出来ません。
たとえば、サーフィンやスノーボードなどバランスが必要な場合、必ず膝を曲げて乗りますよね。
また、法令で定める最高速度ですが歩道モード時速6km/hでは問題ありませんが、一般的な自転車ママチャリの平均速度より速い時速20km/hとなると、タイヤの大きさやバランスを取る車体の構造に問題があると言えるのではないでしょうか。
交通ルール
改正法が実施される令和5年7月から性能上一定条件を満たす電動キックボードなどの特定小型原付の交通ルールは、冒頭で解説した4つの法改正の他にも新たな交通ルールが適応されることになりました。
主なルールでは、運転者の遵守事項や飲酒運転について、一方通行や車両侵入禁止などの通行禁止場所なども警視庁ホームページで解説しているので参考にしてください。
電動キックボードの事故
事故と取り締まり状況
電動キックボードの利用者が増えるとともに事故件数も増加傾向にあり、警視庁は全国で電動キックボードの取り締まりを強化しています。
検挙数では「通行区分違反」が55%、信号無視が22%と交通ルールを無視して縦横無尽に好きなように走行していることがわかります。
また、指導警告件数では「整備不良」が最も多く、これらは保安部品がきちんと装備されていない電動キックボードが走行していることがわかります。
「特定小型原付」が適応される令和5年7月から警視庁は交通ルールを明確化し、それに合わせて電動キックボード・自転車・電動アシスト自転車などの指導や取り締まりを強化し一気に正常化を図る方針のようです。
過去には電動キックボードによる初めての死亡事故も起きています。
この事故では都内在住の男性が飲酒をしてシェアサービスの電動キックボードをを利用、乗っている際に転倒して頭を強く打って死亡しました。
シェアサービスの電動キックボードの場合ヘルメットは努力義務なので、男性はヘルメットを着用していなかったようです。
まとめ
元々遊び道具として普及したキックボード、車体の改良や電動化を行い便利な移動手段として注目され利用されるようになった電動キックボード。
その利用価値が高く評価され海外でも多くの国で利用されるようになり、日本でもその利用価値から普及を目指し取り組み改善化してきた法改正。
折り畳んで自動車に乗せることも、公共機関に持ち込むことも出来るコンパクトで便利に移動できる電動キックボード。
新たな道交法でスタートする電動キックボード、適応した道路整備や新しい道交法の認知度が上がり交通ルールを守り利用すれば、新しい便利な移動手段になるのではないでしょうか。
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